http://tanaka.sakura.ad.jp さくらインターネット創業日記: 意見・感想アーカイブ

意見・感想の最近のブログ記事

最近、携帯無料ゲーム(ソーシャルゲーム)の宣伝を見ない日はありません。
このソーシャルゲームですが、よく知人から「なぜ無料でできるの?本当に無料なの?」と聞かれます。
そういう時には、「課金を承諾しない限り、ソーシャルゲームは永遠に無料で遊べる」と回答しています。

Venture Now に掲載されていた「ソーシャルメディア利用動向、女性ユーザーが積極的。GREE課金は男性の倍」によると、このプラットフォーム会社の課金ユーザ比率は男性の11.8%、女性は21.2%で、平均すると16.8%しか課金されていません。
つまり6人のうち5人はお金を払わずに楽しんでいるわけです。
(女性比率が多いというところも気になりますが、今回は華麗にスルーします)
20101230-social.jpg
出典: Venture Now

それではなぜ無料が成り立つのでしょうか?
今更感もある話ですが、改めて原価と売上という2つの観点から見てみたいと思います。

まず原価の観点から。
ソーシャルゲームの原価は何があると思いますか?
ざっくりというと、広告宣伝費、開発費、インターネットインフラ費(サーバ費用)、課金手数料、サポート費用です。
このうち、ユーザの数と関係なくかかるのが広告宣伝費と開発費で、ユーザの数に連動するのはサーバ費用と課金手数料、サポート費用です。
無料の場合は課金手数料はかかりませんので、実質的にユーザの増加によって増えるのはサーバ費用とサポート費用です。
それではサーバ費用やサポート費用はいくらかかるのでしょうか?
これは正確に出せるものではありませんが、何とか計算してみましょう。

まずサーバ費用ですが、潜在ユーザも含めて1ユーザがひと月に平均1000ページビューのアクセスをするとして計算します。
ひと月に1000万ページビューまでさばけるサーバのコストが月々3万円だとすると、30,000円×1000PV÷10,000,000PV=3円/月程度となります。
サポート費用ですが、2,000万人のユーザを200人でサポート、管理すると仮定して計算します。実際にはもっと少ない人数だと思います。
1人月を60万円だとすると、60万円×200÷2,000万人=6円/月程度となります。

ここで出てきた合計9円/ユーザ/月という数字について、それ自体には意味はありませんが、言いたいのはユーザーが1人増えようが、コスト増が「無視できるほどに小さい」ということです。
このように、携帯無料ゲームにおける1ユーザあたりの原価は驚くほどに安いので、無料ユーザが増えたところで原価はそれほど多くはありません。
ちなみに、旧来型のゲームの場合は、カードリッジを作ったり、販売店にマージンを払ったりしなければなりませんから、無料で提供するということは出来ませんが、ソーシャルゲームの端末はいつもの携帯ですし、ゲーム自体もオンラインで提供するため、前出のようなコストを掛けなくて済むというのも大きいでしょう。

次に売上の観点から。
携帯無料ゲームの売上は、大きく分けるとアイテムと広告の2つからもたらされますが、ほとんどはアイテムからもたらされます。
ということで、上記の例で言うと6人に1人だけが売上をもたらしてくれます。
それでは、6人のうち5人は邪魔なユーザなのでしょうか?
いえいえそれは違います。
結論から言うと、有料ユーザが楽しくプレイできるよう、無料ユーザが「無償の労働」を行なってくれているのです。
ここでいう無償の労働とは「フリー」(クリス・アンダーソン著、NHK出版)によって述べられているもので、無料のものを手に入れる代償として労働力をタダで提供する行為のことです。
ソーシャルゲームで言うなら、がんばって釣りをしたり、街を作ったりといった作業を通じて、ゲームの活性化のために奉仕を行っているということです

釣りゲームにおいても、みんなが釣れるようでは面白くありません。
すぐに折れてしまう釣竿でゲームをする無料ユーザがいるからこそ、よく釣れる折れない釣竿の価値が上がり、有料ユーザとして「お金を払おう」という気を起こさせるわけです。
直接の売上こそ有料会員からもたらされるものですが、有料会員が楽しくゲームが出来るのは、無料ユーザのおかげなのです。
もちろん、無料ユーザも楽しんでいるわけですし、無料ユーザ同士であればフェアな戦いがされることになります。
そもそも会員の多くは無料ユーザなわけですから、恐らく大部分ではフェアなゲームが行われているということです。

ここで、提供者と、ユーザのベネフィットを整理してみます。

提供者・・・有料会員は売上をもたらし、無料会員は報酬を渡さずともゲームを盛り上げてくれる
有料ユーザ・・・自分が強い世界でゲームを楽しめる(特権者≒貴族?になれる)
無料ユーザ・・・タダでゲームを楽しめる

このように、無料ユーザと有料ユーザの絶妙な関係性と、ユーザあたりのコストが非常に安いことから、多くのユーザが無料だったとしてもビジネスが成り立つわけですし、むしろ無料ユーザがいないとビジネスが成り立たないと言ってもいいのかもしれません。
ちなみに、2,000万人会員がいたとして6人に1人、すなわち330万人が1,000円払ったとすると月々33億円、年間では400億円の売上が上がることになります。
多くのユーザが無料とはいえ、いかに大きな売上が上がるかがおわかり頂けるでしょう。

ただし、このビジネスモデルを成り立たせるために必要なことが1つだけあります。
それは会員数です。
上記の原価の計算の際に示した数字は、あくまでも数千万人単位のユーザがいることを前提にしました。
サーバについても、サポート体制についても、最低かかるコストはありますし、上記の例でいうとユーザが1人だけだったとしても60万円/月のサポートコストを負担しなければなりません。

また、先ほどの例では言及しなかった開発費や広告宣伝費についても、大量のユーザで割るからこそ無視できる存在になっています。
よく「釣竿なんてコンピュータ上だけのもんなんやから、原価0円やろ」という声を聞きますが、これは当たってるとも言え、しかし外れているともいえます。
釣竿というアイテムを投入するに当たって、ゲームバランスや顧客満足などを検討したり、それを開発したりというコストはタダではありません。例えばアイテム投入に当たって、会議や開発などで1人月60万円×0.5人月がかかったとしたら、一本の釣竿を作るのに30万円かかることになります。それを100万人に売れば1本30銭の原価ですが、100人にしか売れなければ1本3,000円の原価ということになります。
このように、いかにたくさんの人に利用してもらうかが重要であり、その中から生まれる潜在的な有料ユーザをたくさん抱えることが必要となるのです。

ところで、私は今までゲーム機器を購入したことが無いのですが、一時期はGREEのハコニワをプレイしていた(無料ユーザとして)こともありますし、最近はコロプラに凝って(月に1,000円くらい払う)います。
ハコニワは無料、コロプラは有料で楽しんでいますが、どちらも機器購入などの手間もなく、手軽に遊べるのが非常に印象的でした。
ハードルを下げ、多くの人を呼びこみ、そのなかの一部でもお金を払ってくれればよいというモデルによって、提供者側としても莫大な売上を上げることが出来ますし、利用者側としても手軽にゲームが楽しめます。その、双方にメリットがあるということがソーシャルゲームの普及の源泉なのでしょう。
(もちろん、パケット定額制で、使っても使わなくても電話料金が変わらない時代になったというのも大きいでしょう)

ただ良いことばかりでもないようです。
ここ最近、携帯無料ゲーム(ソーシャルゲーム)に関する苦情が増えている旨の記事が新聞などで取り上げられはじめました。
特に課金ということへの理解度が低い未成年に対する高額課金が取りざたされており、教育や、課金へのハードルの必要性も語られるようになりました。
かくいう私も、昔はパソコン通信(Niftyserve)で5万円くらい使ってしまったこともありますが、ソーシャルゲームの場合は無料だと思い込んでいることもあるでしょうし、昔と違って端末が小さく親が把握しにくく、対象となる人の数が多いことも相まって、当時のパソコン通信と比べて問題は大きいといえます。
(子供が「分からないふり」して課金を承諾してるんじゃないかという指摘もありますが・・・)

なお、「実は無料じゃなかった」問題は以前から知れた話ですが、ソーシャルゲームのプラットフォーム会社はいまやCM出稿の上位に食い込む大口ユーザであり、なかなか踏み込めない「聖域」のようです。
ですので、プラットフォーム会社がCM出稿を減らしたとたん、堰を切ったように批判を始めるような気もしています。

私個人としてもソーシャルゲームは好きですし、ソーシャルゲーム提供者の皆さんはデータセンターの大きな需要家でもありますので、上記のようなことを克服してソーシャルゲームが健全に広がっていくことが必要だと思います。

何かと話題の事業仕訳。
蓮舫が「(コンピューター性能で)世界一を目指す理由は何か。2位ではだめなのか」などと発言して、かなりのひんしゅくを買っているのはみなさんご存じのとおりです。


しかし、本当に今回のスパコンは必要なのか?


正直なところ、今回のスパコンなんて無くても、大して困りません。
一度予算をカットされて、頭を冷やしたほうが良いでしょう。

今となっては、グラフィックボードのGPUを活用して演算ができる時代です。
今回のスパコンで利用する予定のsparcチップがどれだけ素晴らしかったとしても、そこそこの性能が出るIntel Xeonなどを活用した計測計算機作りをするほうが、産業の広がりがあるというものです。(NECはIntelと共同で、ベクトル演算拡張をCPUに入れる研究をしているそうですし)
本当に、1からCPUを設計し、世界中のエンジニアの度肝を抜くようなプロジェクトでない限り、大量の予算をつけるのは無駄です。


ちなみに、既存のチープなCPUやGPUでスパコンづくりをしているプロジェクトは山ほどあります。
スパコン開発で「ゴードン・ベル賞」 長崎大助教ら受賞 「国内最速」安価で実現
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/136999

昨年の話ですが、Sonyや東芝が開発した和製のCellを利用したIBMのスパコンもあります。
IBMのスーパーコンピュータ、1ペタFLOPSを達成--PS3のCellを使用
http://japan.cnet.com/news/ent/story/0,2000056022,20375049,00.htm


ちなみに、IBMはPOWER7で10PFlopsを目指すそうです。これは、今回のスパコンプロジェクトの目標値と同じです。
ハッキリ言って、1位になれないのが分かっているプロジェクトに意味はありません。
1位かそれ以外。スパコンの世界はその2つしかありません。
2位ではだめなのです。
オンリーワンではなく、ナンバーワンでなければならないのです。

それらの活動を通じて、研究者・技術者が世代のバトンタッチをし、いつまでも日本がスパコンで認められる国にならなければなりません。


今後、草の根で起こり始めている国内のスパコンプロジェクトをよく吟味し、気合いを入れてプロジェクトを立て直し、国税をたっぷりとつぎ込んで日本の真価を世界に知らしめること。この方向性を、政治家、科学者、官僚がしっかりと握り、世界に冠たる科学技術大国になってほしいと心から願います。

結局、スパコンプロジェクトはかなり「怪しい」「妖しい」ものであるのは否定できません。
その上で、今回の問題はスパコンが否定されたことではなくて、「1番でなくてもいい」「科学技術予算が投資ではなくコスト」という言葉が国民の代表から発せられたことが、一番憂うべき事態だと思うわけです。

日本が技術以外、何で生きていくというのでしょうか・・・。

私がやりきれないのは、科学立国で生きているくせに、それの重要性を理解しようとすらしない、政治家たちの貧困さなのです。


P.S.
日本の研究者の方で、HPCの研究をしたいという方がおられれば、ぜひ共同研究をしましょう。
データセンターファシリティとサーバであれば提供できます。
できれば、チープなマシンを何千台も並べて、ひとつのコンピューティングリソースとして共用できるプロセッシングファームを作りたいと思っていますから。
いつか、スパコンは「スーパーコンピューター」から「スーパーコンピューティングファーム」となって、もっとたくさんの人が恩恵に与かれる日が来ることを願っています。

報道特集で、中国上海の『かわいい上海人運動』というものを特集していました。
中で、お父さんと娘さんが出てきて、娘さんが学校で学んだ "マナー" をお父さんに押し付けているシーンがありましたが、お父さんが赤信号でわたろうとしたときに娘が制止し、青信号で親子でわたろうとすると信号無視の自転車にぶつかられるというシーンがありました。予想通りの展開に笑ってしまいましたが、本当にそんな状況です。
要は、安全かどうか自己責任で確認して、渡ろうというわけです。
青信号だから安心なわけでなく、赤信号だから危険なわけでなく・・。

大阪もおんなじようなものじゃないかと思ったのは私だけではないはず。
というか、まったく車の通らない深夜の赤信号を守って、ただたたずんでいる東京の風景に、時に驚かされることは多いですが・・

ところで、『かわいい上海人運動』じゃなくて、「可爱的」を『敬愛される』と訳したほうが良いんじゃないかと思うんだけれど・・・。

道に迷う人は、山へ登るときより下山するときのほうが多いそうです。
また、下山時に道に迷うと、引き返して道を正すことをせずに、そのまま進んで、山頂へは戻りたくない心理が働くとのことです。
登山に限らず、普通の道でも迷うと引き返さずに、補正しようとしてしまう、これは私もよくあることです。引き返すのが何か負けた、損した感じもするので。
でも、やっぱりこういうときは引き返す、立ち止まる勇気も必要なのです。

それは会社経営でも一緒。
たとえば、商品の売れ行きに問題があったときに、そのまま宣伝を増やせば良いというものではない。チャネルを増やせば良いというものではない。
会社は、いつでも立ち止まって、その商品・事業を考え直すという選択肢をはずしてはならず、場合によっては後戻りも発生することなのだろうと思います。しかし、それは物事を始めるよりずっと難易度の高い決断が必要です。しかし、それが出来る会社でなければならないのだろうと思います。

少なくとも、さくらインターネットは、不振事業を新規事業でカバーしようという社風にだけはなりたくないものだと、心から思って経営をしています。

Q:初値予想はいくらですか?
A:わかりません。
Q: ビックなネタはありますか?
A: わかりません

いろいろ考える事はありますが言える訳もなく、とりあえずインサイダー情報を聞き出そうとしても、無理です。(笑)
実は、いろんなひとから、いろんな場面で聞かれます。

あと、資産形成とかなんとかって郵送してくれても、私は売り出しをしないし全株ロックアップ済みなので、ふつうの給与所得者です。だから、いろいろ資料を送ってくれても無駄です。
とりあえず、今は東京三菱銀行のとびっきり低利な定期預金で満足してます。

しかし、目論見書に自宅電話番号が載っていなかった事が、かなりの救いでした。

久しぶりに、土曜日の休みが取れたので、梅田へ行ってきました。

最近、梅田の界隈は、再開発のラッシュです。
阪神電鉄の西梅田開発(ハービス大阪)は一段落したものの、阪急百貨店の建替え工事や、新しい大阪駅ビルの建設など、あちらこちらで工事をしています。
その中でも、一番の目玉といえるのが、北梅田再開発。ちょうど、大阪駅の北側にある広大な梅田貨物駅を取り壊し、新たな町づくりを行うというものです。

一部の報道機関において、大証のヘラクレスにおける新規上場の再開が報道されたようです。
しかしながら、大証サイドは否定しているようで、現状ではそのような事実は無いよう。

http://www.ose.or.jp/profile/press/050913.pdf

うちの会社は、本社が大阪にありながら東証のマザーズに上場してしまうわけですが、やはり地元大阪の取引所にはがんばって欲しい気持ちでいっぱいです。

今日は中国における抗日戦勝記念日です。
出張中、マッサージ屋のテレビに映るCCTVも、抗日記念番組一色。歴史を鑑みることは重要なことですが、あんなプロパガンダ活動を続けていることは、日本人から見た隣人意識を確実に悪化させています。
中国の抗日運動は、日本というスケープゴートを作って中国人のナショナリズムを高揚させ、共産党政権の安定化を狙うという目的です。歴史を振り返って、今後の平和のために云々・・とか、そういった理由ではないことは明らかでしょう。
しかし、中国共産党のプロパガンダに手を貸しているのは、他ならぬ日本のカードであることも考えなければなりません。

今日は、とりあえず今後の詳細の打ち合わせや原価の話などを行い、パートナーとの展開については全て調整が完了しました。本当に良かったです。

その後、7時くらいに終わることが出来たので、食事に行き、昨日に引き続いてマッサージに行ってきました。
今回は昨日と異なる店ですが、こちらも足つぼ1時間と全身1時間の合計2時間で、80元でした。
あれだけやってくれて80元とは、うれしい限りです。

Ryo氏より、ジョッキバトンをまわされてしまいました。
ジョッキバトンとはなんやということなのですが、どうも酒にまつわる話を暴露すべきことのようです。;-)

http://mixi.jp/view_diary.pl?id=33833988&owner;_id=99402 - Ryo@mixi

長らくBlogをサボってたわけですが、これを機会に、書きかけの日記をすべて整理して、継続してやることにします。(また、途切れそうですが・・)

と、本題。

自己紹介

本名:田中邦裕/1978年生まれ
1996年にさくらインターネットを創業しホスティングサービスを開始。 98年に有限会社インフォレスト(2000年に解散)設立後、翌年にさくらインターネット株式会社を設立して社長に就任。
05年に東証マザーズに上場
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