ECサイト構築・運営サービス「カゴラボ」で地元宮崎から全国区へ

アタラナの創業者の1人である、同社 専務取締役 穗滿一成氏は、創業当時のことを次のように振り返る。
「当時、宮崎市郊外に巨大なショッピングモールができた影響もあり、中心市街地の人影が著しく減ったように感じた。中心市街地には良品を扱っている店舗が多いが、集客に課題をいち早く感じられた方々は、既にネットショップをオープンさせるなど努力をされていたが、周りにITリテラシーの高い人が少なく相談する相手も居ない。そこで、そうした商店や店舗にネットショッピングのノウハウとサービスを安価に提供することで、何とか地元活性化に貢献したいと考えた」
こうした思いの下で開発されたのがカゴラボだった。創業当初は、もともとビジネスノウハウを有していたアパレル業界にターゲットを絞った。地元宮崎の店舗からスタートし、決裁者との距離が比較的近い他地方・他県の店舗を中心にサービスを提供していたが、評判が口コミやメディアを通じて広がって行くにつれ他業種にもサービスを展開していき、現在では地元のみならず、関東圏を中心に全国の企業から引き合いが絶えないという。
ちなみにカゴラボのサービス内容は、世に数多あるECサイト構築サービスとは明らかに一線を画している。穗滿氏は、カゴラボの特徴を「フルスクラッチ開発と、ASP型サービスとの間の、ちょうど中間辺り」と表現する。
「サイトが稼働するインフラやサイトのコンテンツはほぼ弊社が管理している。顧客がECサイト運営に慣れていなければ商品登録など基本的な管理でも運営が出来、専属チームがあるような顧客の場合は契約に応じてFTPを解放することもできる。このように、よくあるASP型サービスとは異なり、サイト個別でかなりきめ細かくカスタマイズできる。しかも、一からサイトをデザイン・構築するのではなく、あらかじめ用意されているパッケージをベースにカスタマイズするため、フルスクラッチ開発よりはるかに安価に、かつスピーディーにサイトを立ち上げることができる」
具体的には、オープンソースのECサイトプラットフォーム「EC-CUBE」をベースに、ECサイト運営に必要な機能を独自に付加し、さらにセキュリティ機能やシステム監視機能なども盛り込んだオールインワンのパッケージサービスとして提供している。しかも、単にインフラやアプリケーションの機能を提供するだけに留まらず、同社のデザイナーによるサイトデザインや、社内スタジオを使った商品撮影の代行サービス、さらにはサイトの売り上げを伸ばすためのECコンサルタントチームがあるなど、ECサイト構築・運営に必要な全ての機能・要素をワンストップで提供するという。
「弊社が提供するサービスはカゴラボのみならず、ECサイト運営やマーケティングに関するサービスも自社発できている事が強み。ご利用頂くことでお客さまの負担を減らし、本来の仕事であるネットショップ上での接客や販売戦略に注力していただける」(穗滿氏)
さくらインターネットのインフラでサービス品質向上を実現
このカゴラボのインフラを支えている一つとして、さくらインターネットが提供する各種インフラサービスが挙げられる。カゴラボはLinux系OS上で稼働する一般的なミドルウェア上で動作できるため、案件の要件や規模に応じて、各社・各サーバーを使い分けている。実は、カゴラボのサービス提供開始からしばらくの間は、他社のホスティングサービスを積極利用していたという。当初はそれでも大きな問題はなかったものの、カゴラボのユーザーが増え、同社のビジネスが成長していくにつれ、徐々にさまざまな課題が持ち上がってきたと穗滿氏は述べる。
「当初はプログラマーがインフラ管理を兼ねており、社内対応が時間的・技術的に難しい事項はホスティング業者のテクニカルサポートにご協力頂いていた。しかしビジネスの規模が拡大し、インフラも自社内できめ細かく管理してサービス品質を担保したいとなったとき、さまざまなボトルネックが目立つようになった。例えば、利用していたホスティングサービスに元々インストールされていたミドルウェアの存在が把握できず、解決に時間を要することもあった。また当時、利用しているレンタルサーバー会社を1社に絞っていたが、他サーバー会社の機能比較やコスト検討などを十分にできていなかったことも課題だった。」
そこで同社は2011年、社内で新たにインフラチームを立ち上げるとともに、よりきめ細かなコントロールが効くサーバインフラへの乗り換えを複数社検討することとなった。その中の1つとして白羽の矢が立ったのが、さくらインターネットのサービスだったのだ。同社のインフラチームを率いる月岡誠治氏によれば、さくらインターネットの何よりの魅力は、サーバ環境の自由度の高さにあったという。
「さくらインターネットから提供されるサーバ環境は、余計なものが極力入っていない極めてプレーンな環境だったので、環境構築や運用の自由度が高く、非常にコントロールしやすかった。もちろん、あらかじめミドルウェアがセットアップされていたり、管理コンソールが設けられているような環境も、初心者が使う上では非常に便利だと思う。しかし、われわれのようなインフラの専門家が自分たちで環境を構築し、きめ細かく制御したい場合には、時としてそれが仇となってしまう」
こうして2011年以降、月岡氏を中心としたインフラチームが、さくらインターネットが提供するサーバ上で一から環境をセットアップし、さらにカゴラボに適した独自チューニングやシステム監視やセキュリティ対策の仕組みを導入したところ、カゴラボのサービス品質は大幅に向上した。サービス障害の件数は劇的に減り、アクセス速度の低下といったサービス品質にかかわる問題も以前に比べほぼ皆無になったという。
しかし、それにも増して月岡氏が高く評価するのが、さくらインターネットが提供するインフラの信頼性の高さだ。
「ECサイトは万が一ダウンしてしまうと、お客さまにとってはお店が閉じてしまうのと同じこと。そのため、ECサイトのインフラには何よりも高い安定性が求められる。その点、さくらインターネットのサービスは、コストやスペック面での魅力もさることながら、何よりも安定稼働してくれる点がとてもありがたい」
一方穗滿氏は、自社でインフラを管理する体制に移行したことで、サービス品質に対する社内の意識改革も進んでいると言う。
「以前であれば、なにか懸念点があったとき、どこかホスティング業者に頼ってしまう体質があった。その点、利用しているさくらインターネットのサービスは、物理的なサーバ管理とネットワーク管理以外の部分は、すべて自社管理。どんな障害でも自分たちで何とか解決するしかない。そのため自ずと、サービス品質に対する社員の意識も向上してきていると感じる」
サーバ環境のさらなるスケールアウト性の向上に期待
現在アラタナでは、毎月十数件以上というハイペースで顧客が増え続けており、条件の合致した新規ECサイトをさくらインターネットのインフラ上で構築し続けている状況だ。今ではミドルウェアインストールからチューニング、カゴラボの設置まで自動的に行われるようにしているが、今後増え続けるサーバの管理をChefに移行して行くという。こういった新しい試みを行う上でも、さくらインターネットのサーバでは対応ができ、自由度が高いという。
先に紹介したように、カゴラボのパッケージの中にはEC-CUBEのほかにも、WAFやIPSといったセキュリティソフトウェアをはじめ、さまざまなミドルウェアが組み込まれており、同社の長年に渡るECサイト構築のノウハウがぎっしりと詰め込まれている。しかし同時にカゴラボは、決してベンダーロックインしないサービスだとも穗滿氏は言う。
「カゴラボはオープンソースのEC-CUBEをベースにしているので、特定ベンダーのソフトウェアやインフラに依存しない。逆に言えば、お客さまのビジネスの成長に合わせてインフラさえ増強していけば、いつまでも使い続けられるサービスになっている。さくらインターネットのサービスも今後、よりお客さまの要望に合わせて柔軟にスケールアウトできるようなサービスが出てくることを期待している」
月岡氏も、VPSサーバ同士の接続や、ネットワーク帯域の動的な割り当てサービスなどの実現に期待していると述べる。
「現時点では、お客さまのサイトの成長に合わせて近い将来トラフィック増加が予想される場合には、よりスペックの高いサーバへ環境を丸ごと移行することで対応している。しかし、もしサーバ環境を異なるサービス間で自由に移動・複製できれば、より柔軟にサイトのキャパシティーを拡張・縮小できる。その点、間もなくVPSサービスとクラウドサービスの間でサーバイメージをやりとりできるサービスが実現すると聞いている。これは弊社にとって極めてメリットが大きいだけでなく、いちインフラエンジニアとしてもわくわくするようなサービスなので、大いに期待している」
お客様プロフィール
株式会社アラタナ
住所:宮崎県宮崎市錦町1番10号宮崎グリーンスフィア壱番館5階
資本金:126,775,000円
事業内容:ネットショップ制作 / 運営 / 構築 / ネットショップ運営構築に特化したプロダクト開発 / 他
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